1. すべての通貨は「アメリカ」に影響される
国の通貨にもいわゆる「格」というものがある。
世界で最も信用が高い通貨は「基軸通貨(キーカレンシー)」となることができる。
基軸通貨となるためには、
- 世界で一番の軍事力(※戦争などで国がなくならない)
- 世界で一番の経済力
上記2つの条件を満たしている必要がある。
では現在、基軸通貨となっている国はどこかお分かりだろうか?
そう、アメリカである。
実は金融や貿易などの国際取引においては、ほとんどが基軸通貨であるアメリカドルで取引されているのだ。
たとえば、ユーロ円(EUR/JPY)という通貨ペアを例にあげてみよう。
これは、実は「円」と「ユーロ」を直接やり取りしているわけではない。
「アメリカドル」で取引されているのだ。
【ユーロ/円】
× 円 ⇒ ユーロ
○ 円 ⇒ アメリカドル ⇒ ユーロ
すべての通貨はアメリカドルを介して取引が行われている。
ユーロ円の場合、
という計算でレートが決まるのだ。
このように各国の通貨の価値はすべてアメリカドルを基準に決められている。
つまりあなたがFXで値動きを予想する場合、必ずアメリカの動向も把握しなければならないということだ。
ストレート通貨
FXで取引できる通貨ペアは大きく2つに分けられる。
そのうち、アメリカドル(USD)とペアになっている通貨を「ストレート通貨(ドルストレート)」という。
(例)
- USD/JPY(ドル/円)
- EUR/USD(ユーロ/ドル)
- GBP/USD(ポンド/ドル)
…など
クロス通貨
アメリカドルとペアになっていない通貨を「クロス通貨(ドルクロス)」または「合成通貨」という。
(例)
- EUR/JPY(ユーロ/円)
- GBP/JPY(ポンド/円)
- EUR/GBP(ユーロ/ポンド)
…など
ちなみにドル円以外の円の通貨ペアは【クロス円】ともよばれている。
クロス通貨はストレート通貨よりもハイリスク・ハイリターン
基本的にストレート通貨よりクロス通貨のほうが値幅が大きく、ハイリスクハイリターンといわれている。
なぜなら、先述したようにクロス通貨のレートは2つのストレート通貨によって決まるからだ。
たとえば、ユーロ円のレートは以下のように決まると説明した。
ここでカンの鋭い人なら気づくだろう。
ユーロ/ドルとドル/円、2つのレートが上昇した場合、ユーロ円の上昇幅は2つの上昇を掛け合わせたものになるのだ。
ユーロ/ドル = 1.1ドル、ドル/円 = 100円の場合
ユーロ円 = 110円(1.0 × 100円)
ユーロ/ドル = 1.2ドル、ドル/円 = 110円に上昇すると…
ユーロ円 = 132円(1.2 × 110円)
上記のようにドル/円単体で見れば、値幅は10円だ。
しかし、ユーロ円の場合、ユーロ/ドルも上昇すると、その値幅は22円になる。
もちろんこれは下落したときも同じだ。
クロス通貨は値幅が大きくなりやすい分、ストレート通貨よりもリスクが高いのだ。
※ただし、アメリカドルがメインで動いている場合、ストレート通貨のほうが値幅は大きくなる。
2. 主な通貨の特徴
FXで取引をする通貨を選ぶ際は、ある程度その通貨の特徴を知っておくことが重要だ。
USD = アメリカドル(米ドル)
基軸通貨であるアメリカの通貨。
通貨の取引量は圧倒的の世界1位だ。
世界で最も流通量が多く、信用も高いアメリカドルは、戦争や紛争などで世界情勢が不安定になると、「安全資産」として買われる傾向にあるということを覚えておこう。(※「有事のドル買い」といわれている。)
ただし、現在のアメリカドルは以前と比べて基軸通貨としての信頼は弱まりつつある。
有事の際は必ずドルが買われるというわけではなく、あくまでも「買われやすい」ということに注意してほしい。
EUR = ユーロ
ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパ19か国の共通通貨。
通貨の取引量はアメリカドルに次いで世界2位。
「EUR/USD(ユーロ/ドル)」は世界で最も取引されている通貨ペアだ。
ユーロを導入している国の中で、最も経済力があり、リーダー的立ち位置にあるのは「ドイツ」だが、ユーロは複数の国も導入しているため、フランス・イタリア・スペイン・ギリシャなど、他のユーロ導入国の情勢にも影響されるので注意しよう。
JPY = 日本円
われらが日本の通貨。
通貨の取引量は世界3位。
アメリカドル、ユーロ、日本円をあわせて世界3大通貨とよばれている。
近年では「有事のドル買い」ならぬ「有事の円買い」ともいわれるほど、有事の際の「逃避先」や「安全通貨」として買われることが多い。
もちろん円は日本の情勢に大きく影響されるのだが…
たとえば東日本大震災が起こった2011年。
あれほどの大規模な災害に見舞われたにもかかわらず、日本の円は売られることなく、なぜか買われたのだ。
なぜ有事に円が買われるのか?これにはいろいろ諸説がある。
とりあえず覚えておいてほしいのは、「世界情勢が悪くなれば、安全通貨として円が買われる傾向にある」ということだ。
GBP = ポンド
かつて基軸通貨だったイギリスの通貨。
通貨の取引量は世界4位。
イギリスは金融立国として名高く、実は為替取引の規模はアメリカよりも大きい。
ポンドは値動きが非常に激しい通貨であり、FXトレーダーからは「殺人通貨」などとも呼ばれたりしている。
ある意味、流れにさえ乗ることができれば、もっとも稼げる通貨でもあるので、FXトレーダーからの人気も高い。
AUD = オーストラリアドル(豪ドル)
資源国通貨の代表格ともいえるオーストラリアの通貨。
通貨の取引量は世界5位。
資源国とは様々にある貴重な資源を産出する国のことをいう。
資源国は資源を輸出することによって経済が支えられていることが多いため、輸出先となる国に大きく影響されるのが特徴だ
オーストラリアの場合、もっとも輸出している国は「中国」だ。
オーストラリアドルを取引する場合、最大の輸出先である中国の状況も確認しておかなければならない。
CAD = カナダドル(加ドル)
オーストラリアドルと同じ資源国に分類されるカナダの通貨。
通貨の取引量は世界6位。
アメリカの隣国ということもあって、輸出先の大半はアメリカだ。
そのため、アメリカ経済の影響を非常に受けやすい特徴がある。
CHF=スイスフラン
永世中立国であるスイスの通貨。
通貨の取引量は世界7位。
日本円と並び、「安全通貨」として有名なスイスフラン。
ヨーロッパの国だけあってユーロの影響も受けやすい。
その他のマイナー通貨
ここまで紹介してきた通貨は、通貨のなかでも「メジャー通貨」とよばれるものだ。
もちろん世界の通貨はこれだけではない。
FXでは南アフリカランド、トルコリラ、メキシコペソなど「マイナー通貨」も取引することができる。
マイナー通貨はもともと流通している量が少ないゆえ、レートも大きく飛びやすい。
メジャー通貨よりもリスクが高いので、初心者のうちは避けた方が無難だろう。
まず紹介したメジャー通貨でFXをはじめてみて、ある程度慣れてきてからマイナー通貨に挑戦することをオススメする。
3. 経済指標
通貨は基本的に発行する国によってその価値が保証されている。
当然その国の政治や経済によって、通貨の価値も大きく左右される。
毎月、各国の政府は様々な経済指標を発表している。
注目度の高い指標となると、レートの動きもかなり激しくなる。
FXをはじめる上で最低限知っておいてほしい重要な指標をピックアップしておくので、ぜひ頭にいれておいてほしい。
アメリカ雇用統計
基軸通貨を持つアメリカの景気はどの通貨においても重要になる。
中でも、アメリカの景気を知る上で今最も重要とされているのが「雇用統計」である。
なぜなら、アメリカ経済は「個人の消費」によって支えられているからだ。(※アメリカのGDPのおよそ70%を占める)
項目はいくつかあるが、「非農業部門雇用者数」と「失業率」の項目が特に注目される。
つまり、
雇用統計の結果を見て、
労働者が増えた⇒消費が増える⇒アメリカの景気が良い⇒ドル買い!
労働者が減った⇒消費が落ち込む⇒アメリカの景気が悪い⇒ドル売り!
というように判断されて、レートが動くのだ。
アメリカの雇用統計は毎月第1週目の金曜日に発表される。
時間は日本時間で22:30(4月~10月のサマータイム時は21:30)だ。
必ず覚えておこう。
アメリカの雇用統計はどの通貨レートも一瞬で大きく動く。
ギャンブル感覚でポジションを持つ人も中にはいるが、逆行すれば一瞬で資金を失うこともあるので注意しよう。
・FXにおける最大の経済指標
・毎月第1週目の金曜日
・発表時間は日本時間22:30 (4月~10月は21:30)
各国の政策金利
FXを語る上で「金利」はもっとも重要な指標のひとつだ。
なぜなら、国は金利を上げたり下げたりすることで、自国の景気を調整しているからだ。
景気は悪くなると、賃金が下がり、消費も低迷する。
そこで国は金利を下げることでお金を借りやすくして、経済を促進させるのだ。
反対に景気は良くなると、賃金も増え、消費も活発になるが、加熱しすぎると今度は物価が高くなりすぎて、インフレーション(インフレ)を招いてしまう。
そこで、国は金利を高くしてお金を借りにくくし、お金と物価のバランスを調整するのだ。
景気が良い ⇒ 金利が上がる
政策金利が上がれば、その国の通貨は買われやすくなる。
通貨を保有することで高い金利を得ることができるからだ。
反対に、政策金利が下がると、景気が悪くなっていると判断され、その国の通貨が売られやすくなる。
このように政策金利は、景気によってお金の流れを調整するためのものなので、通貨を取引するFXに与える影響はかなり大きいのだ。
政策金利は国の中央銀行(※日本でいうと日本銀行)が年に8回発表している。
あなたが取引する通貨の国のスケジュールは必ず忘れずにチェックをしておこう。
ちなみに各国の中央銀行は英字3文字で表されることが多いので覚えておこう。
日本 ⇒ BOJ
アメリカ ⇒ FRB
ユーロ ⇒ ECB
イギリス ⇒ BOE
オーストラリア ⇒ RBA
もっとも重要なのはアメリカの政策金利(FOMC)
これまで何度もお伝えしているように、アメリカのドルはすべての通貨に影響を持っている。
つまり、アメリカの政策金利はFXにおいてもっとも重要度が高いのだ。
政策金利は、アメリカの中央銀行であるFRBが年に8回発表する。(この話し合いは「FOMC」と呼ばれている)
アメリカの政策金利は、日本時間でいうと午後3時頃に行われる。
日本人は当然寝ている時間なので、そのまま寝落ちしてしまう人も多い。
値動きが不安な人は発表前にポジションを整理しておこう。
4. 取引時間
FXは土・日を除いて24時間取引することができる。
日本株を取引する場合は、基本的に日本の株式市場が開いている時間帯(※平日の9:00~15:00)でしか取引することができないが、為替市場は全世界に存在するからだ。
どの国の為替市場が閉まっても、必ずどこかの国の市場が空いているため、FXは24時間取引というわけだ。
「東京」「ロンドン」「ニューヨーク」は為替市場において世界3大取引市場とよばれている。
この3大取引市場が開いている時間は特に取引が盛んになる時間帯だ。
細かくいうと、この3つ以外にも市場は存在するが、まずはこの3つの市場をまず覚えておこう。
東京時間
日本の東京市場の時間。
主に日本円がよく動く時間だ。
値動きは後述するロンドンとニューヨークに比べて、ゆるやかに動く。
しかし最近では、日本を抜きアメリカに次ぐ経済大国となった「中国」のニュースもこの時間帯に出るので、油断してはいけない。
ロンドン時間
世界1位の取引量を誇るイギリスのロンドン市場。
主にユーロやポンドといった欧州通貨がよく動く時間だ。
時間帯は以下のとおり。
夏時間(4月~10月):16:00 ~ 24:00
冬時間(11月~3月):17:00 ~ 25:00
体感的にロンドン時間は7割~8割の確率で東京時間の値動きの逆をいくイメージだ。
東京時間の参加者から利益を奪うために、16:00の開場後からかなりイジワルな値動きをしてくる。
値動きに惑わされて無駄な取引をしないよう注意したい。
ニューヨーク時間
ロンドン市場に次ぐ取引量のアメリカのニューヨーク市場。
当然だが、アメリカドルがよく動く時間になる。
時間帯は以下のとおり。
夏時間(4月~10月):21:00 ~ 5:00
冬時間(11月~3月):22:00 ~ 6:00
ニューヨーク時間は、かなりダイナミックな動きをすることがある。
日本人「上がりすぎて買えない…」
アメリカ人「hahaha!まだ安い!どんどん買え!」
…まさにアメリカンなイメージである。
サマータイム(夏時間)に注意
日本以外の主要国はサマータイム制度を導入している。
サマータイムが導入されている時期を「夏時間」、それ以外は「冬時間」とよんで区別がされている。
サマータイム
夏時間:4月 ~ 10月
冬時間:11月 ~ 3月
夏時間は冬時間より1時間早く取引や経済指標の発表が行われるので注意が必要だ。
たとえば、重要な経済指標である「アメリカの雇用統計」は冬時間は22:30に発表されるが、夏時間では21:30に発表される。
うっかり見逃してしまわないようしっかりと覚えておこう。
ちなみにニュージーランドやオーストラリアなどの南半球に位置している国は、冬時間と夏時間の適用時期が逆になるので、これまた注意しておこう。
FX取引のゴールデンタイム
日本時間の21:00~25:00前後は、為替取引量1位の【ロンドン市場】と2位の【ニューヨーク市場】の開場がカブる時間帯だ。
この時間帯はFX取引が最も活発に行われる時間であり、FXの「ゴールデンタイム」といわれている。
また日本のサラリーマンにとっても、ちょうど仕事から帰って一服し終えた頃なので、取引に集中しやすい時間帯であるともいえる。
まとめ
FXをはじめる上でまず知っておいてほしい基礎知識を紹介した。