2007年「FXで脱税の容疑で逮捕」というニュースが流れた。
逮捕されたのはなんと東京都在住の主婦である。
彼女の名は「池辺雪子(いけべゆきこ)」。
FXで約4億円を荒稼ぎし、約1億3000万円の脱税容疑で逮捕されたのだ。
- 池辺雪子氏とはどんな人物なのか?
- ただの主婦がどうやってFXで億を超える利益を稼いだのか?
今回は「脱税カリスマ主婦トレーダー」として一躍有名になった池辺雪子氏について紹介していこう。
1.池辺雪子ってどんな人?
池辺雪子(いけべゆきこ)氏は東京都世田谷区在住の主婦トレーダーだ。
2005年~2007年の3年間で約4億円もの大金をFXで稼ぎ出し、その後脱税容疑で起訴、懲役1年6か月(執行猶予3年)の判決を受けた。
「ただの主婦が4億円の脱税!?」
このニュースは当時の世間に大きな衝撃を与えた。
「ミセス・ワタナベ」という単語が投資の世界で広く使われるようになった事件ともいわれている。
7年間トータルで8億3000万円をFXで荒稼ぎ
もともとは株や商品先物をやっていた池辺氏だが、先物会社からの勧めで実は2000年からFXをすでに始めていたそうだ。
FXを始めた2000年~逮捕されるまでの2007年までの約7年間で考えると、なんとトータルで8億3000万円もの利益をあげていたとのこと。
なお、有罪判決確定後の「罰金」を含む「所得税」「住民税」「延滞税」「重加算税」約3億1900万円はキャッシュで一括で完済しており、通常に支払った税金を合わせると計約5億1500円の税金を支払っているそうだ。
とても主婦とは思えない納税額である…
これを機に池辺氏は『FXで8億円以上稼いだ脱税カリスマ主婦トレーダー』として瞬く間に有名人となったのである。
※池辺雪子氏のインタビュー記事は以下の記事で読める。
池辺雪子氏の現在は?
今では大きな話題がほとんど見かけなくなった池辺氏。
現在は書籍の執筆やセミナーの講師、チャートソフトの販売、メルマガ配信など、FX商材に力をいれて活動中のようだ。
- 書籍
「あの4億円脱税主婦が教えるFXの奥義」
「FX フツーの主婦でも億万長者になれた理由」
「あの4億円脱税主婦が教える FX勝利の真髄」 - セミナー
「1億円投資家倶楽部」 - チャートソフト
「Vyukikoチャート」 - メルマガ
登録は無料で、毎週金曜日と第1・第3火曜日に配信される。
過去のバックナンバーは「マネーポストWEB」から閲覧することができる。
2.FXで8億円以上稼いだ池辺雪子氏の手法とは?
さて、気になる肝心の池辺雪子氏の手法とはどんなものだったのか?
池辺氏は「8割~9割はテクニカル分析」というほど、テクニカル分析を好んでいることから様々なインジケータを使用した手法をこれまでに公開している。
短期RSIと長期RSIを使った手法
たとえば、先述のZaiのインタビュー記事では【RSI】を使用した手法を語っている。
RSIとは「Relative Strength Index」の略語で、オシレーター系といわれるテクニカル指標のひとつだ。
一般的な使い方としては、
RSIの数値が20~30以下だと「売られ過ぎ」⇒「買い」
というように使われるが、池辺氏の手法はこのRSIを2本を使った手法になる。
具体的には、
RSIの設定期間42日・・・長期RSI
短期RSIと長期RSIの2本が20以上乖離したところを逆張りするという手法だ。
レンジブレイクを狙った倍加法
また池辺氏は「倍加法」という手法も過去にネット上で販売していた。
倍加法とは『過去の高値と安値の値幅から未来の値幅を予測する』というもの。
つまりは、レンジをブレイクしたの値幅はレンジの幅と同じになるという考え方だ。
- レンジ相場を探して、その高値と安値に線を引く
- レンジを上(高値)か下(安値)に抜けたらエントリー
- レンジ幅と同じ値幅で利益確定
※ユーロ円 週足チャートでの例
倍加法自体はよくあるレンジブレイクの手法のひとつで、知っている人は知っているので特に目新しい手法というわけではない。
レンジブレイクの手法で最も重要になるのはエントリーや利確ポイントではなく、いかにダマしを避けられるかだが…
倍加法のページでは以下のように記載がしてある。
レンジブレイクを見極めるには、
中長期のチャートを見て、相場の大勢波動を確認したり、順張り(トレンドフォロー)系のテクニカル指標やフィボナッチ、日柄などチェックして、レンジをいつ・どちらに抜けるのかを判断する必要があります。
※引用元
3.なぜ8億円以上もFXで稼げたのか?
池辺氏はなぜFXで8億円も稼ぎだすことができたのだろうか?
あらためてZaiのインタビュー記事をもとに考察していこう。
当時は「ユーロ」の大相場
池辺氏は当時はFXがまだ黎明期で「円」「米ドル」「ユーロ」しか取り扱いがなかったため、最初は「ドル円」から、そして徐々に「ユーロ円」「ユーロドル」へと取引を広げていったとのことだ。
なかでも「ユーロ」は当時1999年に誕生したばかりの通貨で、一本調子で下落している途中だった。
そんな中、池辺氏は現在でも大底ともいえる「ユーロ円:90~100円」「ユーロドル:1ドル以下」で買いを仕込んでいたのだ。
「その頃、ユーロ/円はどんどん下がっていって、ついに89円をつけたんですね。そこから協調介入があって、上がっていきました。当時は『介入』ってよくわかりませんでしたけどね。でも、90~100円ぐらいで、ユーロ/円はバッチリ仕込みましたよ。
ユーロ/ドルはねぇ。最初はユーロ/ドルって何なの? という感じでした。ユーロ/ドルはドルでスワップがもらえるんだ、決済したら為替差益もドルなんだとわかりまして…(注:FX会社によって異なる)。ならば、私は旅行が好きなので、ドルへ両替する手間が省けて便利だなと思って、ユーロ/ドルをやり始めました。これは1ドルを割ったところで、仕込みましたね」
その後「ユーロに対する協調介入」やアメリカの「ITバブル崩壊」「同時多発テロ」「FRBの金融緩和」などによるドル全面安も相まってユーロは大底をつけ、2000年から2008年のリーマンショックが起きるまで空前のユーロ高となったのだ。
※ユーロドルの2000年~2007年チャート
※ユーロ円の2000年~2007年チャート
上記は当時の月足チャートだが、かなりの勢いで上がっていっているのがわかる。
当時は「円キャリートレード」も全盛期
さらにその後、池辺氏は「豪ドル」や「ニュージーランドドル」にも手を広げている。
「その後、豪ドルやニュージーランドドルを扱うFX会社が出てきましたので、豪ドルは60円台、ニュージーランドドルは55円台ぐらいで仕込みました。豪ドルの60円台は今でもまだ持っているものもあります。オセアニア通貨は高金利なのがいいですね。『オージー様様、ニュージーランド様様』と私は時々言ってるんです」
2005年~2007年はユーロ高のほか「円キャリートレード」の全盛期ともいわれている時代だ。
2000年~2007年の高金利通貨のクロス円ペアもかなりの勢いで上昇した。
※豪ドル円の2000年~2007年チャート
ユーロや豪ドルの2000年~2007年の急激な上昇トレンドは、池辺氏がFXをはじめた2000年から逮捕されるまでの2007年までの期間とぴったり当てはまる。
自分の手法さえハマれば、億越えの利益を出してもまったくおかしくはないだろう。
低レバレッジで損切は極力しないトレードスタイル
池辺氏は損切に対してポストセブンの記事で以下のように述べている。
FXの解説本やセミナーなどで、著者や講師の方が強調するのは、損切りの重要性です。ストップロス(損切り指値)をきちんと入れておけば、大きな損失を出さずに済む、ということなのですが、実は、私は損切りがそんなに重要だとは思っていません。逆に、こまめにすることで、利益を出すチャンスをみすみす逃してしまう、と考えています。
さらに資金管理やレバレッジについても以下のように述べている。
私は、資金管理さえしっかりしておけば、損切りのためのストップロスは必要ないと考えています。ここでいう資金管理とは、投資資金を証拠金の3分の1から半分までに留めておくことです。そうしておけば、相場が自分の予想と反対方向に動いても、強制決済されず、ある程度耐えられます。相場が自分の予想通りに動くまで、じっくりと待てるわけですね。先日の震災後の急激な円高時も、証拠金に余裕があれば、ストップロスを回避できたと思います。
ただし、3分の1から半分というのはひとつの目安であって、FX業者によっては建てられる枚数に差が出ます。レバレッジで見た場合、10倍前後に収まるようにしておきましょう。
このことから、池辺氏は損切は極力せず低レバレッジで長期的に運用していくスタイルが主であることが予想される。
当時が急激なトレンド相場であったことも考えると、資金の増加スピードもかなりのものだっただろう。
こういった大相場の場合、人間の心理的には、ある程度利益が出たところで利益確定したくなったり、逆張りをしたくなったりと余計なことをして利益を減らしてしまいがちだ。
膨れ上がる利益を見ながら長期でポジションをホールドするのは、並大抵のことではない。
池辺氏は相当なメンタルの持ち主であることがうかがえる。
2008年の暴落相場は運よく避ける
さて、その後の2008年以降は多くの人がご存じの「リーマンショック」があった年だ。
これまでの円キャリートレード組も軒並み全滅した相場ともいわれている。
池辺氏が損切を極力しないスタイルであれば、多額のロスカットをされてもおかしくはないはずだが….
「昨年の夏は実のところ、トレードにあまり集中していなかったんです。裁判があって、手持ちのお金で税金を無事に払えるかどうかとか、そちらのほうが大変でしたからね。だから、ポジションが少なかった昨年の夏は無事に過ぎました。
なんと当時は裁判で忙しかったこともあって無事に乗り切っていたようだ。
逮捕された時期はまさに絶好の利確ポイントでもあったのである。
まさに「運も実力のうち」といったところだろうか…
まとめ
池辺雪子氏の情報をネットで調べてみると、評判があまり良くない記事も少なくない。
中でもFXで8億円稼いだことについて最も多く見られたのが「たまたま運が良かっただけ」という意見だ。
かくいう私自身も考察してきた中でその可能性が高いのではないかと感じている。
ただ、当時大底で買いを仕込めた相場観や利益をホールドできるメンタルは目を見張るものがあるだろう。
手法に関してはあまり参考にならなかったかもしれないが、少しでも参考になれば幸いだ。