以下のような強い上昇トレンド相場があったとしよう。
多くのトレーダーは「ある程度下がったら買いたい!」と考えるだろう。
また一方で、「ある程度上がったら売りたい!」と考えるトレーダーもいるだろう。
では、その「ある程度」とはどのくらいを目安にすればいいのか?
そんな時に役立つのが「フィボナッチ」系の分析ツールである。
今回はチャートの分析ツール「フィボナッチ・リトレースメント」について解説していく。
相場が大きく動いているとき、「乗り遅れたくない!」と、つい衝動的に売り買いしてしまう初心者は非常に多いが…
それでは、たとえ方向があっていたとしても相場の波に耐え切れずロスカットされるのがオチだろう。
勝てるトレーダーというのは決してあせらず自分がエントリーしたい位置まで待てることができる。
フィボナッチを使えばどこまで待てばよいかの目安を知ることができるので、初心者の人はぜひ覚えておこう。
1.そもそも「フィボナッチ」ってなに?
「フィボナッチ」とはざっくりいうと、「人間がもっとも美しいと感じやすい比率」のことをいう。
元々はイタリアの数学者の名前であり、数学者「フィボナッチ」が世に広めたことからその名前が付けられている。
レオナルド・フィボナッチ
(※Wikipediaより)
「フィボナッチ数列」と「黄金比」
数学者「フィボナッチ」が世に広めた有名な「数列」がある。
この数列は「フィボナッチ数列」とよばれており、「どの数字も前2つの数字の合計」になっているのが特徴だ。
この数列は不思議なことに数字が大きくなるにつれて、次の数字は前の数字の「1.618倍」へと近づいていく。
この「1:1.618」という比率は、有名な「芸術作品」や「企業ロゴ」などに使われていたり、さらには「貝殻」や「ひまわりの種」など自然界においても多く見られる不思議な比率であることから「黄金比」と呼ばれている。
「人が最も美しいと感じやすい不思議な比率」とされているのだ。
2.株やFXなどにおけるフィボナッチ
フィボナッチは株やFXなどのチャート分析の手法として、今日まで多くのトレーダーに広く使われている。
「フィボナッチの黄金比は相場の世界でも適用されるのではないか」と考えた人がいたわけだ。
フィボナッチによるチャート分析では以下の比率がよく使われる。
これらはすべてフィボナッチ数列によって導き出された比率となる。
数値自体は取引ツールでデフォルトで設定されていることがほとんどなので、特に覚えなくても問題ない。
3.フィボナッチツールの種類
フィボナッチの比率を利用した分析ツールは、様々な種類がある。
- フィボナッチ・リトレースメント
- フィボナッチ・エクスパンション
- フィボナッチ・タイムゾーン
- フィボナッチ・アーク
- フィボナッチ・ファン
それぞれの使い方はまた別の機会で解説するとして、今回はこの中で最もよく使われているであろう「フィボナッチ・リトレースメント」の使い方を解説していく。
4.実際のチャートで「黄金比」を確認してみよう。
では実際のチャートで「フィボナッチ・リトレースメント」を利用して黄金比を確認してみよう。
【MT4アプリでの「フィボナッチ・リトレースメント」の使い方】
- チャートをタップ
- 「(図形のマーク)」をタップ
- 「フィボナッチリトレースメント」を選択。
- チャートのどこでもいいので、タップしながらドラッグすることでラインを引くことができる。
まずやることはフィボナッチ比率の「0%」と「100%」をチャートのラインに合わせてることだ。
他のラインはとりあえず無視してかまわない。
ポンド円の日足チャートを例に見てみよう。
ポンド円/日足
上図はポンド円の実際の日足チャート。
下落トレンドの中、底値圏から急激な上昇反発が見られた場面だ。
トレンドが転換した可能性が考えられるが、初心者はここであせって追いかけて天井を掴んでしまいがちだ。
一旦落ち着いて、まずはフィボナッチを引いてみよう。
フィボナッチ・リトレースメントを使い、直近の目立つ安値に「0%」、高値に「100%」を合わせてみよう。
※少し見にくいかもしれないが、画像では灰色のラインが「0%」と「100%」のラインだ。
すると、自動的にそれぞれ「23.6%」「38.2%」「50%」「61.8%」「78.6%」「161.8%」とフィボナッチ比率に応じたラインが引かれるはずだ。
では、ここで仮に「トレンドが転換し、今後大きく上昇していく」と考えたとしよう。
チャートはこのまま一直線には上がらず、必ずどこかで押し目※をつくってくることが予想される。
※押し目 (おしめ)
上げ相場が一時的に下がること。 その動きを「押す」または「下押す」といいます。 その下がったところを買うことを「押し目買い」といい、押し目があったら買おうと待っていることを「押し目待ち」「押し目狙い」といいます。
なので、引いたフィボナッチラインを目安に下がってくるのを待つことになるのだ。
さて、ポンド円の日足チャートはこの後どういった動きをしたのか。
ポンド円/日足チャートのその後の動き
ポンド円はその後、数日間下落が続くことになるが、フィボナッチで引いたラインで細かく反発しているのがチャートでわかる。
相場の参加者がフィボナッチのラインを意識している証拠だ。
チャートは日足なので値動きは小さく見えるが、値幅としては十分。
このライン付近はひとつの「買いポイント」といえるだろう。
そして、この下落は上昇幅の「38.2%」に届こうかという時に第2の上昇が起きる。
非常に強烈な上昇だが、この上昇は見事にフィボナッチ比率である「1.618倍」で一旦止められた。
この「1.618倍」のラインは、ひとつの「利益確定ポイント」または「売りポイント」といえるだろう。
今回の例は比較的キレイなチャートを出したが、どのチャート・どの時間軸に引いてみてもフィボナッチのラインは少なからず意識されている。
色々なチャートでぜひ試してみてほしい。
5.実践では他の手法と合わせて使うのがセオリー
ただし、フィボナッチは実践で使うにはひとつ問題点がある。
それは「どの%で止まるかがいまいちわからない」ということだ。
61.8%で止まるときもあれば、38.2%や23.6%で止まるときもある。
161.8%まで伸びるときもあれば、200%や300%まで伸びることもある。
ハイレバの海外FXでは、少しでもポジションから逆行すれば命取りになりかねない。
実践ではフィボナッチだけでなく、他の手法と組み合わせることで勝率を上げるのがセオリーだ。
(他の手法との組み合わせ方はまた別の記事で紹介する予定だ。)
まとめ
フィボナッチの比率が相場でもかなり意識されているのがおわかりいただけただろうか。
フィボナッチを使えば、「どこまで下がりそうか」「どこまで上がりそうか」の目安を確認することができる。
(こちらも別記事で紹介するが、「値幅観測」にも便利だ。)
初心者にありがちな値ごろ感でのトレードを減らすことができるので、使えるようになっておこう。